ベトナムはどんな国?日本との文化・ビジネスの違いを紹介

昨今、人材力の高さで注目を集めているのがベトナムです。政府がITや数学・科学などの教育に力を入れたことで、世界で有数の高学力の国へと変貌しました。世界中の企業がBPOやIT拠点としてベトナムに進出しています。

また、ベトナムは親日国としても有名で、多くの若い人材が日本での仕事を熱望しています。

本記事では、日本とのつながりがますます強くなりつつあるベトナムがどのような国であるのかについて、文化やビジネスの観点から紹介します。ベトナムに興味のある方は、ぜひ参考にしてください。

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目次

ベトナムの基本情報

ベトナムは、東南アジアにあるインドシナ半島の東側に位置する国で、中華人民共和国やラオス、カンボジアなどと接してます。南北に長く広がっており、南部は雨季と乾季のはっきりとした熱帯気候ですが、北部は日本と同じように四季が楽しめます。北部に位置する首都ハノイと、南部の中心都市ホーチミンでは気候や文化、料理などが大きく異なります。

画像は外務省のベトナム社会主義共和国のページより

ベトナムの基本的な情報を以下の表にまとめました。

項目詳細
人口105,758,975人(2024年推定値)
首都ハノイ
面積33万1,210km²(日本よりも少しだけ小さい)
気候熱帯性気候(北部は温帯気候に近い)
民族ベトナム人 85.3%、タイ族 1.9%、ムオン族 1.5%、その他
言語ベトナム語、英語(高学歴者を中心に)、フランス語、中国語
宗教無宗教86.3%、カトリック6.1%、仏教徒5.8%、プロテスタント1%、その他0.8%
人口増加率0.89%

参照:Vietnam – The World Factbook

ベトナムの特徴的な文化とは?

ベトナムの文化は、独自の歴史と多様な影響を受けて形成されています。ベトナムには仏教が深く根付いており、多くの寺院や仏像があります。また、儒教や道教の影響も強く、家族や先祖を大切にする風習や祭り・イベントが色濃く残っています。

ベトナムはフランスの植民地であった影響で、一部の建築や料理にフランスの要素が取り入れられています。例えば、バインミー(ベトナム風サンドイッチ)やカフェ文化はその代表例です。

伝統的な文化と植民地時代のフランス文化が融合し、独自の魅力を持つベトナム文化が形成されています。

日本人が愛するベトナム料理

ベトナムと聞くと、ベトナム料理を思い浮かべる方も多いことでしょう。代表的な料理として、米粉の麺を使ったフォーや、フランスパンを使ったバインミー、生春巻きとしても知られるゴイクン、ハノイ発祥の肉野菜料理ブンチャーなどがあります。

ハーブやスパイスが豊富に使われ、甘味、酸味、塩味、苦味、辛味の五味が調和しています。ただし、地域ごとに料理の特色があり、北部は淡白な味付け、中央部は辛味、南部は甘味が強くなっています。

町のいたるところに屋台が出ており、ローカルフードを格安価格で楽しむことも可能です。

アジアとヨーロッパが融合した文化・芸術

ベトナムは絵画や彫刻などの芸術作品が豊かで、伝統的な技法と現代的な表現が融合した見事な芸術作品がいたるところで販売されています。

ベトナムは19~20世紀初頭にわたって、フランスの植民地でした。そのため、文学や芸術などは、フランスの影響を大きく受けています。例えば、ホーチミンのサイゴン大教会や中央郵便局などは、フランスの建築様式が組み込まれています。アジアとヨーロッパが合わさった独特な景観を楽しめるのもベトナムの大きな魅力といえます。

無宗教者が多いが仏教の影響が大きい

ベトナム人に宗教を聞くと、特定の宗教に対する信仰はないという答えが返ってきます。しかしながら、国全体の建設物や習慣などには、仏教が大きく影響を与えています。宗教面においては、日本と近い国といえるでしょう。

フランスの植民地時代にキリスト教が広まったため、キリスト教信者は一定数存在します。ただし、宗教による考え方の違いはそこまで大きくなく、様々な宗教が共存しています。

移動はバイクが中心

ベトナムでの主な移動手段はバイクです。半数を超えるベトナム人がバイクを所有しているといわれており、移動や買い物、デリバリーなどにバイクが使われます。通勤時間ともなると道路をバイクが埋め尽くすため、この異様な光景に驚く人も多いことでしょう。

また、ベトナム人はクラクションを多用します。初めて体験する際には、うるさいなと感じたり、なぜ歩行者が優先なのにクラクションを鳴らされるのかと不快になったりすることもあるでしょう。このあたりは、その国に行ったらその国のルールに合わせるしかありません。交通事故にだけはあわないように、道路を歩く際には慎重に行動するようにしてください。

ベトナム独特の民族衣装

ベトナムでは赤を基調とした鮮やかな民族衣装が有名です。「アオザイ」と呼ばれ、長いチュニックとズボンで構成されます。動きやすさと優雅さを兼ね備えた衣装で、フランスの植民地になる前にすでに存在していたため、ベトナム独自の文化が反映されています。

アオザイは結婚式や伝統的な儀式の際などに身に着けるのが一般的です。昨今では、観光客向けのアオザイ体験を提供するレンタルショップも増えており、外国人であっても気軽にアオザイを楽しめます。

地域によって異なる伝統的な祭り

ベトナムには多くの祭りやイベントがあります。伝統的なお祭りやイベントなどは、隣接する中国からの影響を強く受けています。

特に重要なのはテト(旧正月)です。先祖を敬うために家族が集まり、特別な料理や花火、伝統的な遊びなどが行われます。中秋節は子供たちが楽しむイベントで、月餅を食べたり、ランタンを灯したりします。

地域によって独特な踊りや習慣の祭りやイベントもあるため、興味にある人はスケジュールを合わせ、覗いてみるとよいでしょう。

公用語はベトナム語だが英語レベルも高い

ベトナムの公用語はベトナム語です。ベトナム語はもともと、中国の影響を受けて漢字が使われていましたが、16世紀以降にヨーロッパの影響を強く受け、ローマ字表記が取り入れられ、現在のベトナム語ができあがったといわれています。ローマ字とも少し異なるため、外国人にとっては習得が難しい言語の1つとして認知されています。

ベトナムでは早期からの英語教育に力を入れているため、一定水準の教育を受けた人であれば、英語がスムーズに使えます。昨今ではこの英語力の高さを活かし、アウトソーシング会社が非常に多く設立されています。

ただし、どこでも英語が通じる、というわけではありません。街中では英語でのコミュニケーションは好まれず、会話を嫌がる人も多くいます。ベトナム語と英語をうまく使い分けていく必要があるでしょう。

もし英語でのやりとりを優先するのであれば、シンガポールやフィリピンなど、英語が公用語として使われている国を候補に挙げるのもおすすめです。

ビジネス面から見たベトナムの特徴

ベトナムは、若くて質の高い労働力が豊富で、特にITや製造業での人材が充実しています。さらに、低コストのビジネス環境が整っており、人件費や物価が比較的安いため、コスト効率の良い運営が可能です。法人税もうまくいけば10%程度まで下げられます。

経済成長も著しく、近年はGDP成長率が安定して高い水準を維持しています。また、親日的な国民性があり、日本企業に対する信頼感が高いことも大きな利点です。

これらの要素が組み合わさり、ベトナムはビジネスにおいて非常に魅力的な市場となっています。

法人税は20%だが実質税率は12.3%

ベトナムの法人税は一律20%に設定されています。日本は23.2%のため、これを見ただけだと大きな違いはありません。しかしながら、ベトナムは様々な軽減税率が適用でき、外資であってもその恩恵を受けられます。

外資系企業の平均税率は12.3%といわれているため、日本の法人税よりも10%ほど低くなります。税率を大幅に下げられるため、昨今多くの外資系企業が参入してきています。

右肩上がりの高い経済成長率

先進国の経済成長率が停滞する中で、ベトナムは毎年5~8%程度の経済成長が見込まれています。ベトナムのGDP成長率は、2020年、2021年は新型コロナウイルスの影響で2~3%の上昇にとどまりましたが、2022年には8%、2023年には5%と好調です。2024年も6~7%程度の範囲で着地するとみられています。

日本の経済成長は今後停滞すると考えられているため、新規市場を探している会社にとっては非常に魅力的です。

人材の質が高い

ベトナムは東南アジアの中でも人材の質が高いことで知られています。例えば、一般的な学力を測る統一テストの結果では、近隣のタイやマレーシアを大きく引き離したスコアを獲得しています。

項目ベトナムインドネシアマレーシアフィリピンタイ
人的資本指数20200.690.540.610.520.61
統一テストのスコア519395446362427
就学年数10.687.838.897.498.68
成人の生存率0.870.850.880.820.87

Investing in the Early Years to Boost Human Potential – The World Bank –

また、政府がITや数学、科学教育に力を入れたカリキュラムを作成、実施したことから、ベトナムでは優れたIT人材が数多く養成されています。IT人材は今後世界で不足することが予想されていることからも、ベトナム人のIT人材はさらに人気が高まってくることでしょう。

ビジネス英語に対応できる

東南アジアで英語が通じる国はシンガポールとフィリピンのみ、という認識は古いものになりつつあります。ベトナム人の英語力はフィリピン人の劣らないレベルまで高まっており、アメリカ人やイギリス人とのコミュニケーションもスムーズに図れます。

ベトナム人すべてが高い英語スキルを身に着けている、というわけではありませんが、大学を卒業し、さらに外資系企業で働く意欲を持つ若手人材であれば、高い英語力を備えている可能性が高いでしょう。

高い英語力と人材力を武器に、ベトナムではBPO拠点が着々と増えてきています。日本企業も、日本企業向けのIT人材育成や、英語圏にサービスを提供する拠点として注目しており、日系の現地法人設立が人気を集めています。

まだまだ低い人件費

ベトナム人は高いスキルと語学力を有している一方で、人件費は諸外国と比べるとまだまだ低い傾向にあります。2024年7月からベトナム人の最低給与が6%引き上げられましたが、それでも最低月給は約3万円ほどです。

最低時給に関しては、地域によって異なるものの、約120円程度に設定されています。日本では全国の最低時給が1,000円ほどのため、8分の1程度の人件費で人材を雇用可能です。

もちろん、外資系企業で働く人材の給与はもっと高く設定されていますが、優秀なIT人材をまだまだ安い人件費で雇えます。

昨今は様々な国がベトナム人材を雇用しており、IT人材の相場も高まってきています。日系企業は給与が伸び悩んでいることに加え、円安の影響も受けるため、他国の給与条件と比較した場合に、日系企業への関心を持ちづらくなっているのも事実です。

優秀な人材をできる限り安く獲得するには、できる限り早くベトナム進出することをおすすめします。

残業は好まれない

日本では頻繁に発生する残業ですが、ベトナム人は残業を嫌がります。理由として、仕事はあくまでも給与の対価として行っているもので、例え給与が上乗せされたとしても、自分の時間を奪われたくないと考えるからです。

残業どころか、就業時間間際になると片付けを開始し、終了時間と同時に帰宅する人たちも多くいます。

日本のように残業は応じて当然だ、勤務時間のぎりぎりまで働くのが当たり前という気持ちでビジネスをスタートさせると、意識の違いによって大失敗する可能性があるため注意が必要です。

若くフットワークの軽い人材が多い

ベトナムの人口は約1億人で、平均年齢は31歳です。若くて体力があり、外資系企業で働くフットワークの軽さも備えている人材が多くいます。日本では今後少子高齢化がますます進むと考えられているため、若い人材の確保が困難になります。若い働き手を長期にわたって確保するには、ベトナムは非常に適した国といえます。

また、ベトナム人は親日家が多く、さらに勤勉な人が多いため、日本人との関係性も良好です。日本企業で働きたい、いつか日本に行って働きたいという人が多いため、雇用も比較的スムーズにいくことでしょう。

自分の信念を曲げない人が多い

ベトナム人は、相手に合わせるというよりも、自分の意見を強くも持ち続ける傾向にあります。そのため、相手の考えや行動を読み取って合わせるという日本のビジネススタイルに合わない人も多くいるのが実情です。

しかしながら、一人ひとりは非常に高いスキルを持っているため、依頼したタスクは確実に実行してくれます。ベトナム人を活かすには、日本式のビジネススタイルを強制するのではなく、ベトナム人が活躍できるルール作りに力を注ぐ必要があります。

もし協調性が高く、関係性構築が得意な人材を探しているのであれば、「微笑みの国」と呼ばれるタイなども視野に入れるとよいでしょう。

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