ベトナムの法人設立で必要なビザは？就労ビザの種類や取得方法を紹介

ベトナムで法人設立をするだけであれば、就労ビザは必要ありません。また、代表者が渡航せずに代行会社に依頼して法人設立してもらうことも可能です。

しかしながら、ベトナム現地でスタッフの指導を行ったり、営利活動に携わったりする場合には就労が許可されたビザを取得する必要があります。また、ベトナムで外国人が働くには、就労ビザに加えて、労働許可証も必要です。

ビザや就労許可証の手続きがうまくいかない場合、せっかく法人設立できたのに、日本人が現地で働けない、という状況になりえます。

本記事では、ベトナム進出を検討している企業が、どのように法人設立・ビザ取得を進めればよいかについて、分かりやすく解説します。

就労ビザの申請や取得をスムーズに進めてくれるおすすめの代行会社の情報もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

ベトナムにおける法人設立とビザの関係性

ベトナムで法人設立する際には、様々な書類を提出する必要があります。しかしながら、その書類の中に、ビザのコピーは含まれていません。つまり、ベトナムで法人設立をする際には、ビザの種類については制限がありません。

また、代行会社を介することで、日本にいながらベトナム法人を設立することも可能です。つまり、ビザがなくても、ベトナムで法人設立を行えます。

ベトナムでの法人設立の手順については以下の記事で丁寧に説明しておりますので、合わせてお読みください。

しかしながら、法人設立後にベトナム現地で業務を行うためには、就労が許可されたビザ（いわゆる就労ビザ）が必要です。たとえ会社の代表であっても、外国人がベトナム国内で働くためには、適切な就労ビザを取得しなければなりません。

そのため、法人を設立後、完全手放しで運営する（ベトナム人や代行会社に運営その他を完全に任せる）場合を除き、就労ビザの申請や取得手続きを行う必要があります。法人設立と就労ビザの取得はセットとして考えておいてもよいでしょう。

また、ベトナムでは、外国人には就労ビザに加え、労働許可証（ワークパーミット）の取得を義務づけています。2つが揃っていない場合には違法就労となるため、注意してください。

就労ビザとは別に必要な労働許可証（ワークパーミット）とは？

国によっては、就労ビザの取得に加え、外国人労働者には労働許可証の取得を義務づけています。ベトナムは労働許可証が必要な国のため、就労ビザと合わせて労働許可証の申請・取得も行う必要があります。

ビザは、イミグレーションが管轄を行う在留許可証です。ビザ認定を受ける個人に犯罪歴がないか、必要書類が適切に提出されているかなどが重視されます。

一方で労働許可証は、法人を管理する省もしくは中央直轄市の労働傷病兵社会問題局か労働傷病兵社会問題省の管轄です。許可証を取得する個人が勤務予定の職業にふさわしい経歴やスキルを有しているか、雇用主（企業）が適切な法人手続きを実施しているか、などがチェックされます。

労働許可証のほうが厳しくチェックされるため、取得までに2週間以上かかるのが一般的。スケジュールに余裕をもって実施することが重要です。

ベトナムで法人設立する2つのパターンとビザの関係

一般的には、海外で法人設立をし、その後運営するための方法は以下の2つです。

しかしながら、ベトナムは、就労も自由にでき、かつ長期で滞在可能ないわゆる「永住ビザ」を発行していません。そのため、ベトナムでは、法人設立を実施後に、代表及び日本人従業員のビザを取得するという1のパターンのみとなります。

ベトナムで取得できるビザの種類と特徴

ベトナムで取得できるビザは、条件によってかなり細かく分けられており、全部で27種類あります。今回はその中でも、日本人と関係性が強いものに限定して取り上げます。

DL（観光ビザ）

「DL」は、観光を目的としてベトナム渡航をする人が取得できるビザです（観光ビザ）。申請が通ると、最長で90日間のベトナム滞在が許可されます。有効なパスポートを有している日本人であれば、45日までのベトナム滞在が入国時に自動的に付与されます。

DLは、ベトナム国内の旅行は可能ですが、就労はできません。ただし、この45日を利用して法人設立に必要な手続きを行うことは許可されています。

「NN」「DN」「LD」（就労ビザ）

ベトナムで働くためには、上記のDLではなく、「NN」「DN」「LD」などの就労ビザを取得する必要があります。

種類	特徴
NN	法人の代表者などが取得できるビザ。法人設立を行い、その後運営を行うためには、NNの取得を目指すのが一般的。
DN	業務用ビザと呼ばれるもので、ベトナムに訪問し、ベトナム国内の企業とやりとりを行う際などに取得する。1回のみ訪問できるシングルビザと複数回の訪問が許可されたマルチビザがある。
LD	ベトナム国内で外国人が就労する際に取得するビザ。別の日本人従業員を雇い、管理や業務を依頼する際にはLDを取得する。

「DT」（投資家ビザ）

ベトナムへの投資が一定額以上になると「DT」と呼ばれる投資家ビザを取得できます。しかしながら、最低投資額は30億VND（約1,700万円：2024年9月時点のレート）とかなり大きな投資額が求められます。法人設立ではなく、ベトナムへの移住を目的とした外国人などが取得するのが一般的です。

ベトナムでの法人設立とビザ取得の流れ

ベトナムで法人設立を行い、その後ビザ取得を目指す場合には、以下の流れで実施するのが一般的です。

１．入国する

まずは法人設立の準備を進めるためにベトナムに入国します。この際のビザは特に指定はないため、日本人であれば自動的に付与させる45日間の観光ビザでも問題ありません。しかしながら、法人設立やその他の準備が45日間では完了しない場合には、観光ビザの延長手続きを実施する必要があります。

法人設立を代行会社に依頼する場合には、入国せずにベトナム法人を設立することも可能です。

２．ベトナムで法人設立を行う

ベトナムで法人設立を行います。ベトナム法人設立に関する流れは以下の記事を参考にしてください。

ベトナムでは、法人設立のために複数の官公庁から証明書を取得する必要があります。また、法人設立に印鑑が必要など、独特の手続きが必要なため、慎重に実施するようにしてください。

３．就労ビザの申請を行う

ベトナムでは、基本的に入国時に取得したビザを変更することができません。しかしながら、いくつかの条件に当てはまる場合には、既存のビザを異なるビザに変更することが可能です。

法人設立の代表者はこの条件に当てはまるため、ビザの変更が可能です。既存のビザをNNなどに切り替えておきましょう。ベトナム国内に点在するイミグレーションにて対応してくれます。

必要な書類は条件によって大きく異なるため、一度近くのイミグレーションに足を運び、どのような書類が必要かを確認するとよいでしょう。

４．労働許可証の申請を行う

労働許可証の申請を行います。労働許可証は法人を管理する省もしくは中央直轄市の労働傷病兵社会問題局か労働傷病兵社会問題省で申請可能です。労働許可証の取得が免除される条件もいくつかありますが、基本的には労働許可証は取得しなければならないと考えておくとよいでしょう。

気をつける点として、労働許可証が取得できるのは、以下の条件に当てはまる外国人のみです。

• 管理職・CEO
• 専門家
• 技術者

かつ、個人の犯罪歴や職歴、企業の業績や計画書などが細かくチェックされます。例えば、日本人の新卒を雇い、ベトナム国内で働いてもらおうとしても、専門性や経験が不足していると判断された場合には労働許可証を取得できません。そのため、日本人従業員の雇用は慎重に実施する必要があります。

ベトナムでは、就労ビザ取得よりも労働許可証の取得が複雑でわかりにくい傾向にあります。もし労働許可証に関する手続きをスムーズに進めたければ、実績豊富な外注会社に依頼するのがよいでしょう。

就労ビザの申請・取得は各企業でも可能？

就労ビザの申請・取得は、各企業でも可能です。しかしながら、かなりの労力が必要になることは事前に理解しておくとよいでしょう。

まず、要求される資料がオフィスによって異なります。ネットで記載されている書類を集めて持っていっても、追加で別の資料を要求されることは日常茶飯事。

また、担当者が英語を苦手としている場合、スムーズにコミュニケーションが図れるベトナム人を連れてくるように要求されることもあるでしょう。

これにより、就労ビザや労働許可証の取得に数ヶ月かかり、予定通りに事業を開始できない可能性があります。

就労ビザや労働許可証をスムーズに取得するには、代行会社に依頼するのがおすすめ。関係省庁とリレーションが確立されている代行会社であれば、スケジュール通りにビザや労働許可証を取得してくれます。

代行会社の利用にはもちろん一定の費用がかかりますが、スムーズかつ確実な取得を目指しているのであれば、自社で対応するのではなく、実績豊富な外注会社を利用することをおすすめします。

ベトナムでビザ申請に強い代行会社の選び方

ベトナムでビザ申請の代行会社を選ぶ際には、以下のポイントをチェックするとよいでしょう。

ビザ申請に慣れている会社であっても、ベトナムでのビザ申請に精通しているとは限りません。また、ベトナムではビザ取得以上に労働許可証の取得が必要ですが、労働許可証はベトナム国内でしか取得できないため、必ずベトナム国内に拠点を持つ代行会社を選ぶようにしてください。

ベトナムでは年々物価や人件費が上昇していることから、できる限りビザ申請を安く済ませようと思い、格安の会社を探しがちです。しかしながら、格安サービスには危険も伴います。期限までに対応してもらえない、専門性の低いスタッフが担当したことで問題が生じるなど、逆に複雑化する場合もあります。

そのため、重要な案件であれば費用よりもサービスやサポート内容、信頼性などをより重視して選んだ方がよいでしょう。

ベトナムの就労ビザ申請でおすすめの代行会社5選

会社名	詳細	サービス内容
行政書士法人 IMS	日本とベトナムの両方に拠点があり、ベトナム人バイリンガルスタッフが複数在籍。法人設立・ビザ・労働許可証のトータルサポートを提供している。	各種ビザの取得代行、労働許可証の取得代行、法人設立代行、ベトナム政府との各種やり取り代行
さむらい行政書士法人	ビザの取得に特化したサービスを提供する行政書士法人。ビザプロフェッショナルによる質の高いサービスが格安で受けられる。	ビザの取得代行（観光ビザ、就労ビザ）、労働許可証の取得代行　ほか
立航トラベルサービス株式会社	新規従業員用の就労ビザを取得したい企業に向けて、ビザ取得代行の格安サービスを提供している。	業務・就労・家族帯同ビザの代行取得
VACサイゴン税理士法人	ベトナム進出に関するトータルサポートが受けられる税理士法人で、日本に2拠点、ベトナムに2拠点ある。法人設立からビザ取得代行、会計税務、労務代行まで、幅広いサポートが自慢。	ビザ取得代行、労働許可証取得代行、法人設立代行、会計税務、労務などの運営サポート　ほか
PRONEXUS VIETNAM CO.,LTD	ベトナム進出に関する幅広いサービスを提供している日系のベトナム法人。アドバイザリーから書類作成の代行、法人設立後の運営サポートまで、幅広く対応してくれる。	ビザ取得代行、労働許可証の取得代行、法人設立代行、会計税務、労務、総務などの運営サポート、オフィスレンタルに関する手続き代行やサポート　ほか

行政書士法人 IMS

「行政書士法人 IMS」は、東京とハノイ、ホーチミンの3か所に拠点を構える法務事務所です。ベトナム人のバイリンガルスタッフが3名在籍しているため、日本語とベトナム語による各種サポートが可能。

ベトナムの各種ビザや労働許可証にも対応しており、同法人が指定した書類を集めるだけで安心安全にビザが取得できます。また、法人設立を含めたトータルサポートや複雑になりがちなベトナム政府とのやりとり代行などにも対応しています。

費用相場	要問い合わせ
サービスURL	https://vn-visa.attorney-office.com/

さむらい行政書士法人

「さむらい行政書士法人」は、世界各国のビザ取得代行を行っている行政書士法人です。ベトナムに拠点はないものの、ベトナム語が話せるスタッフが在籍しており、確かな経験をもとにビザ取得業務を代行してくれます。

ビザに特化した専門家集団のため、ビザに関する困りごとは何でも答えてくれる安心感が強み。日本国内のオフィスも東京、大阪、愛知にあるため、対面での相談がしやすいのも特徴の1つ。格安価格でのサービスを提供しており、事前に価格を共有してくれるため、安心して依頼できます。

費用相場	労働許可証の取得：100,000円（税別）
サービスURL	https://samurai-law.com/vietnamvisa/

立航トラベルサービス株式会社

「立航トラベルサービス株式会社」は、アジア各国のビザ取得代行を行っている会社です。明瞭で格安な価格設定が自慢で、1年間の就労ビザ（マルチビザ）の代行取得が42,000円で依頼できます。

ベトナム国内でのビザ切り替えなどには対応していないものの、新しい従業員のために就労ビザを取得したいという場合には、選択肢の1つとなるでしょう。

費用相場	1年間有効の就労ビザ（マルチビザ）取得代行：42,000円
サービスURL	https://donguri-tour.co.jp/1641433606122031.html

VACサイゴン税理士法人

「VACサイゴン税理士法人」は、ベトナムのホーチミンとハノイに拠点を構える税理士法人です。日本にも東京と大阪の2か所に事務所を構えているため、日本とベトナムの両方で高品質のサポートが受けられます。

ベトナム進出に関するトータルサポートを提供しており、リサーチから法人設立、ビザ・労働許可証の取得代行、会計税務や労務業務の代行まで幅広く対応。労働許可証の取得代行は600USD～で対応可能です。

費用相場	労働許可証の取得代行：600USD～
サービスURL	https://www.vac-viet.com/visa/

PRONEXUS VIETNAM CO.,LTD

「PRONEXUS VIETNAM CO.,LTD」は、ベトナムのホーチミンに本社を置く企業で、日系企業のベトナム進出をトータルでサポートしています。ビザや労働許可証の取得代行はもちろんのこと、現地法人や駐在員事務所の設立代行、会計や税務、総務、人事、労務などに関する運営サポート、レンタルオフィスの契約代行やツアー、ベトナムでの商標登録、ベトナム進出に関するアドバイザリーなど、幅広いサービス内容が特徴。

様々な業務をトータルで依頼したい、法人設立後のサポートも依頼したい企業は検討するとよいでしょう。

費用相場	要問い合わせ
サービスURL	https://www.pronexus-vn.com/acting/workpermit