シンガポールは日本から距離が近いため、海外旅行先としてよく話題に上ります。また、シンガポールの法人税は一律17%で、各種軽減税率を適用すれば10%前後まで下げられるため、日系企業の進出先としても人気です。
一方で、シンガポールとはどのような国なのか、よくわからないという方も多いようです。シンガポール文化やビジネスマナーを知ることは、移住や海外進出を検討する上で重要な材料となるでしょう。
そこで本記事では、シンガポールの基本情報や文化、日本とのビジネスの違いなどを詳しく説明します。シンガポールに興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
- シンガポールの基本情報
- シンガポールの文化や言語
- シンガポールのビジネス情報
- 日本とシンガポールの違い
シンガポールの基本情報
シンガポールは、東南アジアにあるマレー半島の先端に位置する国です。マレーシアとシンガポール海峡に囲まれた非常に小さな国で、東京23区と同程度の大きさしかありません。しかしこの小さな国の中に非常に多くの人々が住んでおり、独自の文化を築き上げるとともに、ビジネス面においても世界で大きな役割を果たしています。
シンガポールの基本的な情報を以下にまとめました。
項目 | 詳細 |
---|---|
人口 | 6,028,459(2024年推定値) |
首都 | 国全体が一つの都市のため、首都はなし |
面積 | 719km² |
気候 | 熱帯性気候 |
民族 | 中国系74.2%、マレー系13.7%、インド系8.9%、その他 3.2% |
言語 | 英語、中国語、マレー語、タミル語、その他 |
宗教 | 仏教徒31.1%、キリスト教徒18.9%、イスラム教徒15.6%、道教8.8%、ヒンズー教徒5%、その他0.6%、無宗教20% |
人口増加率 | 0.87% |
シンガポールの特徴的な文化とは?
「人種のるつぼ」とも呼ばれるシンガポールでは、様々な背景を持った人々が生活し、独自の文化を築き上げています。中でも安全性や複数の標準語、ビジネス環境の優位性などは、シンガポールの魅力をよく反映しているため、ぜひ押さえておきたいところです。
世界で最も安全な国(都市)
シンガポールの安全性や治安のよさは、常に世界でトップレベルに位置付けられています。実際、多くの調査において世界一を獲得しています。
例えば、Institute for Economics and Peaceが毎年報告している世界平和指数(Global Peace Index)の2024年調査においては、国の安全性や治安の良さを評価する「社会の安全と治安(Societal Safety and Security)」の項目において、シンガポールが最もよいスコアを獲得しています。
順位 | 国名 | スコア |
---|---|---|
1 | シンガポール | 1.213 |
2 | アイスランド | 1.238 |
3 | ノルウェー | 1.267 |
4 | スイス | 1.303 |
5 | フィンランド | 1.308 |
6 | デンマーク | 1.315 |
7 | 日本 | 1.336 |
日本も安全面に関しては世界で高い評価を受けており、同調査にて7位にランクインしています。しかしながら、シンガポールは日本よりもさらに高い安全性や治安のよさを備えていると評価されています。海外に住む、もしくはビジネスを行うのは不安だ、という方も、シンガポールであれば安心して実行できるでしょう。
世界で最も生活費が高い国(都市)
シンガポールが獲得しているもう1つのランキング1位が生活費です。シンガポールは、世界の中でも生活費が高い国として知られています。
例えば、イギリスのエコノミスト・インテリジェンス・ユニットが毎年発表している生活費が高い都市のランキングにおいて、2023年度版の調査でシンガポールがスイスのチューリッヒと並んで第一位を獲得しました。シンガポールが生活費が高い国ランキングで1位をとった回数は、過去11年で9回に上ります。
シンガポールで特に高いのが住居費です。シンガポールは狭い国土に多くの人が住んでいるため、他国と比べて土地やマンションの値段が高くなっています。多くの人々は高層マンションに住んでいますが、家賃だけで30~50万円ほどします。
国自体が小さいため、移動費などは比較的抑えられるものの、シンガポールで一定水準の生活をしようとすれば、日本の1.5~2倍ほどはかかると考えたほうがよいでしょう。
シンガポールの言語は英語?
シンガポールの主な言語は英語です。ただし、「シングリッシュ」と表現されることもある通り、訛りのある英語が話されます。そのため、アメリカやイギリス英語などに慣れた人からすると、聞き取りにくさを感じるかもしれません。
ただし、シンガポールで英語が必ず通じるというわけではありません。政府機関やビジネスにおいては英語が主である一方で、ローカルな会話では、中国語やマレー語、タミル語など、様々な言語が使われています。
シンガポールは「人種のるつぼ」と呼ばれるように、多様な文化や民族が共存している国です。言語に関しても、英語・標準中国語・マレー語・タミル語の4言語が標準語とされており、街中表示や紙幣などには、この4つの言語が記載されています。
観光都市シンガポールの魅力
シンガポールは観光地としても人気があり、日本やアジアはもちろん、世界中から人々がやってきます。特に人気があるのは写真スポットとして有名な「マーライオンパーク」やインフィニティ―プールのある「マリナーベイサンズ」です。
他にもアーティスティックな建造物や高層階からのナイトビュー、老舗高級ホテル、川沿いに広がるマーケットなど、シンガポールでないと味わえない魅力が多々あります。
シンガポールへの観光客数は、新型コロナウイルスの影響で一時大きく減少したものの、2023年には新型コロナウイルス前の約70%にあたる1,360万人まで回復しており、今後さらなる観光客数増加を見込んでいます。
シンガポールの食事事情
有名な観光地はいくつもある一方で、シンガポールの食についてはよく知らない方も多いことでしょう。シンガポールは様々な文化が入り混じった国であるため、アジアベースのレストランであれば簡単に見つかります。一方で、シンガポール特有の料理というのは多くありません。中国やベトナム、タイ料理などが好きな人であれば、シンガポールでの食も楽しめるでしょう。
シンガポール特有の料理を1つ挙げるとするのならば「チリクラブ」が有名です。高級なカニが、トマトベースのチリソースに浸った状態でドンっと出されます。写真映えすること間違いなしです。
シンガポールの食文化や雰囲気を味わいたいのであれば、点在するナイトマーケットに足を運び、人々との交流も含めて楽しむのがよいでしょう。
ビジネス面から見たシンガポールの特徴
観光や移住地としても人気のシンガポールですが、ビジネス面においても独自の方策を打ち出しており、多くの外資系企業がシンガポールに進出しています。特に魅力的なのが一律17%の法人税や、外資系企業が利用できる各種軽減税率などです。
シンガポールでのビジネスやマナーについて、日本との比較も交えながら詳しく紹介します。
裕福層が多い
シンガポールは、裕福層が多く、購買意欲が高い人々が多いことで有名です。例えば、国民一人ひとりの豊かさを示す「一人当たり購買力平価GDP(PPP)」を調べた国際通貨基金の報告(2024)によれば、シンガポールのPPPは世界で4位で、133,737ドルでした。ちなみに日本は36位で、54,184ドルです。
シンガポールに住む人々は、日本に住む人と比べて2倍以上の購買力を持つことを意味します。日本では値段が高くて買手がつかない商品やサービスであっても、シンガポールであれば飛ぶように売れる可能性も。
シンガポールは、日本から近く、資産に余裕がある人が多いため、日本とは異なるマーケティング戦略を打ち出せるという魅力があります。新しい市場を探している企業にとっては大きなチャンスとなることでしょう。
法人設立のしやすさと低い法人税
シンガポールの法人税は、一律で17%です。日本は23.2%のため、シンガポールでビジネスを行えば、大きな節税効果が期待できます。
また、シンガポールは企業に対して様々な軽減税率を提供していますが、それらは外資系企業であっても享受できます(中には外資系企業向けのものもあります)。これらを適用すれば、実質の税率は10%程度になります。
さらに、シンガポール政府は外資系企業の参入を推奨しているため、法人設立は比較的簡単です。実際、シンガポールに進出している日系企業の数は2024年時点で1,000社を超えています。
シンガポールでの法人設立は大きな節税効果が見込めるため、日系企業に人気の進出先になっています。シンガポール進出に関する詳細や手順については、以下の記事を参考にしてください。
アジア~世界のハブ空港としての魅力
シンガポールは、海外進出の主要拠点として重要な価値を持ちます。まず、日本からシンガポールに直行便が複数の空港会社から出ており、7~8時間ほどで移動が完了します。また、シンガポールは東南アジアや中東、ヨーロッパ、その他各国・エリア行きの路線を有しているため、国際的なビジネスハブとして優れています。
また、国際ビジネスで欠かせない金融セクターとのつながりに関しても、シンガポールは近年、香港を抜き、アジアで首位の座を獲得しました。
シンガポール政府も、外資系企業向けの優遇政策を次々に打ち出しており、シンガポールの勢いは止まりそうにありません。シンガポールに拠点を持っておくことで、世界的なビジネスがやりやすくなる可能性があります。
インフレと人件費高騰
シンガポールは法人設立のしやすさと低い法人税率の影響で、多くの外資系企業が進出しています。しかしながら、近年撤退する企業も後を絶ちません。その最たる理由が近年急速に進むインフレと人件費高騰です。
物価上昇の指標となる消費者物価指数においては、シンガポールは2022年に、前年比6.1%増と非常に高い数値を記録しました。2023年には4.8%増と多少は緩和されましたが、先進国としては非常に高い値です。これはつまり、すでに物価の高いシンガポールにおいて、近年さらにインフレが急激に進行していることを意味します。
数年前は日本と同じぐらいの値段だったものが、現在では2倍となっているのも珍しくありません。さらにこの流れは今後も続くと考えられるため、数年後には3倍、4倍となっている可能性もあります。この物価の高さに適応できず、撤退する企業も多くいるのが現状です。
物価高に比例して、シンガポール国内の人件費も高騰しています。以前はシンガポールの優秀な人材を、日本と同じ、もしくは安い給与で雇用できました。しかしながら現在は、日本で日本人を雇う金額の1.5~2倍ほど準備しないと、優秀な人材を雇えません。
シンガポールで働いてくれる日本人を雇いたくても、低い給与であれば就労ビザの申請が通りません。シンガポールでビジネスを行うには、ある程度の資金力が要求されるため、進出のハードルは年々高くなってきているといえます。もしシンガポール進出を検討しているのならば、できる限り早めに準備に取り掛かり、実行に移すことをお勧めします。
参照:金融政策を維持、2024年のインフレは一段と軟化へ(シンガポール) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース
飲み会や打ち上げが少ない
日本とシンガポールをビジネス面で比較した場合、シンガポールでは飲み会や打ち上げが少ない、という特徴があります。イベントが終わった後も、お疲れ様と声を掛け合い、そのまま自宅に帰るのが一般的。飲み会や打ち上げといった居酒屋文化は日本独自のものであるため、シンガポールに限らず海外ではあまり聞きません。
気をつける点として、日本のビジネスルールを徹底しすぎると、勤勉な人が多いシンガポールであっても、場合によっては距離を置かれます。シンガポールは多様性を尊重する文化のため、日本のような礼儀・作法が重視されるビジネス文化とはマッチしない可能性があります。日本式のビジネスマナーを必要以上に取り入れるのは避けたほうがいいでしょう。
シンガポールの独特なルールや罰則
日本のビジネス文化は浸透していない一方で、シンガポール独自のルールや罰則はいくつかあります。ビジネスと関連性が高いものもあるため、ここで紹介します。
- 公共交通機関での飲食は禁止
- においの強いもの(フルーツのドリアンなど)は公共交通機関への持ち込み自体禁止
- ポイ捨てで高額の罰金
- 屋外での飲酒禁止、深夜のお酒の販売・購入禁止(一部を除く)
- チューインガムのシンガポール持ち込み禁止
- 公共の場でのつば吐き禁止・罰金
- 他人のインターネットへの無断アクセス禁止
- 公共の場での音楽禁止
- 横断歩道のない箇所での道路横断禁止
仕事で急いでいたとしても、道路を横切った場合には罰せられます。仕事の気分転換のために、屋外で大きな声で歌を歌っていた場合には罰せられます。シンガポールではシンガポールのルールに則って生活・ビジネスをしていく必要があります。
転職が頻繁に行われる
海外では、1つの企業に長期で在籍するのではなく、自身のスキルや興味関心に合わせて転職を繰り返すのが一般的です。シンガポールには様々な外資系企業があるためか、この傾向が他国に比べて強く、優秀な人材は短期間で他企業に転職してしまいます。
もし優秀な人材を長期でつなぎ留めたい場合には、それに見合った給与と職場環境、成長できるステージなどを準備する必要があります。シンガポールでの人材管理や雇用に関する悩みを抱えている方は、シンガポールでのビジネスに精通した代行会社に早めに相談するなど、早めの対策を図るとよいでしょう。
シンガポールでのビジネスや移住に興味があれば代行会社利用がおすすめ
シンガポールは、外資参入に積極的な国のため、外資による現地法人設立の難易度はそこまで高くはありません。しかしながら、就労ビザの取得条件は非常に厳しく、ビジネスを予定通りに始められない企業が増えています。
また、投資ビザで移住することも可能ですが、必要な金額が非常に大きいため、慎重に実施することが大切です。もし詐欺案件をつかまされてしまった場合には、それだけで数千万円~数億の損失につながる可能性もあります。
シンガポール移住もしくは法人設立、ビザ取得に興味のある方は、代行会社の利用をおすすめします。代行会社を利用するにはある程度の報酬額を支払う必要がありますが、それ以上に大きな見返りを得ることが可能です。例えば、代行会社の利用には以下のようなメリットがあります。
- スムーズかつ短時間で法人設立・移住できる
- 最新のルール変更に適応できる
- 会社設立や移住に関する業務を大幅に削減できる
- 困ったときに気軽に相談できる
- 詐欺案件をつかまされる可能性が減る
シンガポールで代行会社を利用するメリットについては以下の記事で紹介していますので、ぜひ合わせてお読みください。