近年、芸能人や人気モデル、有名社長などが次々とドバイに移住しており、テレビやニュースで取り上げられることも増えてきました。また、ドバイでは法人税や所得税などを無料にできることから、ビジネスを目的とした移住や法人設立を検討する人も多くいます。しかしながら、ドバイがどのような国なのかを正しく理解している人は少ないように思います。
そこで本記事では、昨今注目を集めるドバイの文化やビジネス環境などを丁寧に説明いたします。日本との違いについてもできる限り取り上げてまいりますので、ドバイに興味のある方はぜひお読みください。
- UAEやドバイの基本情報
- ドバイの文化
- 生活面における日本との違い
- ドバイのビジネス事情
- ビジネス面における日本との違い
ドバイの基本情報
まずはドバイの基本的な情報について整理していきましょう。
ドバイはアラブ首長国連邦(United Arab Emirates:UAE)の首長国の1つです。首長国とは、イスラム世界の君主の称号である「首長」が統治している国を指します。UAEの中には7つの首長国が存在し、その内の1つがドバイです。
宗教の関係もあり呼び名などが異なりますが、UAEという国の中に7つの地域(都市)があり、その内の1つがドバイである、というイメージを持つとよいでしょう。ただし、日本の都道府県とは少し異なり、各首長国でルールが大きく異なります。どちらかというと、州ごとに様々な法的制度があるアメリカ合衆国に近い感じです。
UAEやドバイがどこにあるのかわからない方も多いと思います。下記にGoogle Mapを掲載しましたので、ぜひ場所を確認してみてください。想像していた場所とは違った、という方も多いのではないでしょうか?UAEは、サウジアラビアに隣接した国で、エリアとしては「中東」に分類されます。
UAEの基本情報一覧
知っておくと役立つUAEの基本情報をまとめました。ドバイの文化やビジネスの項目に進む前に、ドバイがあるUAEについて正しい知識を得ておきましょう。
項目 | 詳細 |
---|---|
人口 | 10,032,213人(2024年データ) |
首都 | アブダビ |
面積 | 83,600km²(北海道と同じぐらい) |
気候 | 亜熱帯性乾燥地帯 |
民族 | アラブ人、南アジア系(インドやパキスタン)、エジプト人、フィリピン人 その他さまざまな国からの移住者 |
言語 | 公用語はアラビア語だが、英語も広く使われている |
宗教 | 大半はイスラム教。続いてキリスト教やヒンドゥー教、仏教、その他 |
人口増加率 | 0.6% |
ドバイの基本情報
続いて、ドバイに限定した情報を見ていきましょう。
項目 | 詳細 |
---|---|
人口 | 3,695,227人(2024年データ) |
面積 | 4,114m²(東京都の2倍程度) |
インフレ率 | 3.33% |
GDP成長率 | 3.53% |
主なセクター | 以前は石油、現在は貿易、サービス、金融セクターが中心 |
ドバイの特徴 | 世界でたった2つしかない7つ星ホテル「ブルジュ・アル・アラブ」 世界一高いビル「ブルジュ・ハリファ」 世界中から富豪や起業家が移住・法人設立 |
ドバイの特徴的な文化とは?
ドバイの特徴的な文化や環境は以下の通りです。それぞれについて詳しくみていきましょう。
- 気候は亜熱帯性の乾燥気候で雨がほとんど降らない
- 暑いが環境整備されているため過ごしやすい
- 服装ルールは特になし
- 宗教はイスラム教がメインだが多様な宗教が共存
- 教育レベルは高く基本無料
- 世界唯一の観光地が多数存在
- 物価は東京よりも高い
気候は亜熱帯性乾燥地帯:雨が降らないって本当?
ドバイの気候は亜熱帯性乾燥地帯です。基本的に年中を通して温暖で、雨があまり降りません。
以下はドバイの年間を通した月別最高気温と最低気温です。真夏となる8月は40度を超える暑さになることもあります。比較的涼しい季節となる12月や1月でも20度以上あります。
以下はドバイにおける平均月間降雨量です。5~10月まではほとんど雨が降りません。
これらのデータだけだと、ドバイはとても暑く生活しづらいように見えますが、移住者の話を聞いてみると気候が安定しており過ごしやすい、と感じるそうです。もちろん炎天下では暑く感じますが、多くの建物がエアコンを利用しており、屋内では快適に過ごせるとのこと。
ただし、自然災害への対策は必須です。例えば2024年にはドバイで大量の雨が降り、これによって都市全体が大きな影響を受けました。普段はほとんど雨が降らない都市であるため、大雨への備えはあまり進んでおらず、町中が洪水に見舞われるという問題が発生しました。
服装のルールはなし:ただし気温やドレスコードには注意
イスラム教の女性は宗教上の理由から肌や髪を隠を隠していますが、ドバイは人種や文化のるつぼと呼ばれる都市のため、服装に関するルール等はほとんどありません。ドバイは暑いため、シチュエーションに合わせた薄着をコーディネートするとよいでしょう。また、屋外では日焼け対策(帽子や薄手の長袖など)、室内では何か羽織れるものを準備しておくのがおすすめです。
ただし、高級なホテルや政府機関を利用する際には、ドレスコードや最低限のマナーが存在します。普段と異なる場所を利用する際には、ドバイ生活に精通した人に一度相談するとよいでしょう。
宗教はイスラム教:ただしお互いの宗教を尊重
ドバイの主な宗教は?と聞かれたらイスラム教ですが、ドバイは様々な人種や宗教の人たちが共存している都市です。町中をよく観察すれば、キリスト教や仏教を信仰している人も見つかります。イスラム教では飲酒が禁止されていますが、ドバイはイスラム教の都市にも関わらず、外国人であれば飲酒が認められているなど、独特の立場をとっています。お互いの宗教を尊重することは大切ですが、相手に合わせて態度や意見を変容させる必要はありません。
ただし、「ラマダン」と呼ばれる期間は、イスラム教徒は断食をしているため、神経質になっている可能性があります。また、世界的に見てラマダンの期間には犯罪も多くなるようです。そのため、3~5月ごろにドバイを訪問する場合には、ラマダンの時期を事前に確認(毎年異なるため)し、イスラム教徒に配慮した対応をとるとよいでしょう(人前で食事をとるのを避ける、過度に露出した服装を避けるなど)。
教育は基本無料:もちろん英語学習もあり
ドバイは世界中から富豪が集まる都市のため、教育レベルが高いことで知られています。ドバイでは一般的な学校教育であれば無償で受けられます。義務教育は6~18歳ですが、ドバイでは3歳ごろから就学前教育(幼稚園)に通わせるのが一般的。日本でも小学校から英語の教育が始まりましたが、ドバイではもちろん、小学校から毎日のように英語学習が組まれています。それに加え、小さいころから海外の文化や言葉を積極的に取り入れる学校や家庭が多いのが特徴。他文化や多様性を大切にした教育が行われているのが特徴です。
また、外国からの移住者向けに、多くのインターナショナルスクールがあります。インターナショナルスクールでは基本的に英語で教育が行われますが、現地語であるアラビア語の学習も組み込まれています。
唯一無二の観光体験:世界一高いビルと世界唯一の7つ星ホテル
ドバイには世界で唯一ともいえる観光スポットが多くあるため、連日観光客でにぎわっています。
「ブルジュハリファ」は世界一高いビルで、その高さは828メートル。124階と125階には展望台がありますが、世界一速いエレベーターでわずか35秒で到着します。さらに上空555mの148階の展望台にも行くこともできます。日本の東京スカイツリーの展望台は350mなので、さらに200mほど高いことになります。
「ブルジュ・アル・アラブ」は、世界で2つしかない7つ星ホテルです。見学は受け付けていないため、宿泊もしくはホテル内のレストランやスパを利用する必要がありますが、一度は行ってみたいという人たちが多く詰めかけています。
これ以外にも世界最大級のモール「ドバイ・モール」やドバイの見事な夜景、ペルシャ湾の景観など、様々な観光スポットがあり、世界中から多くの観光客が集まります。
物価は東京よりも少し高いイメージ
ドバイの物価が気になる方も多いことでしょう。ドバイでの生活費を日本と比較した場合、東京での生活よりももう少しかかるかな、というイメージを持つとよいと思います。ただし、ドバイでは毎年インフレが進んでいるため、数年後には様々なものが高いと感じるようになっているかもしれません。
カシューナッツやスパイス、紅茶などは日本よりも格安で購入できます。また、フルーツも比較的安く、日本ではなかなか楽しめないマンゴーやドラゴンフルーツ、ドリアンなどがお手頃価格で楽しめます。フルーツ好きにとっては魅力的な国といえます。一方で、ワインやシャンパンなどの嗜好品は、日本よりも高い印象です。
家賃については、東京と同じか、それよりも高いぐらいのイメージです。ある程度の広さがあるきれいな家やマンションに住もうとすれば、10~20万ほどかかります。また、ドバイでは昨今、家賃が急激に値上がりしているため、数年後にはこの値段では借りられなくなっている可能性も。観光時にお世話になるホテルは、レベルによって大きく異なります。5,000円程度でもある程度清潔なホテルに泊まれますが、高級ホテルであれば1泊10万円以上必要になります。
生活費自体は日本にいるときよりも高くなっている人も多いようですが、ドバイでは「条件を満たせば税金が無料」のため、ある程度の収入がある人にとってはより多くの貯蓄が可能な環境といえます。
ビジネス面から見たドバイの特徴
ドバイは昨今急速なスピードで経済発展を遂げています。政府が経済政策を次々に打ち出しており、今後もビジネスや移住を目的とした外国人が多く集まると予想されています。
UAEは2022年は7.85%、2023年は3.4%、2024の予想は3.52%と、非常に高い経済成長率を記録しています。最近では先進国の成長率は1.6%程度、新興市場国や発展途上国では4.3%程度であることを考えると、UAEの経済成長は新興市場国や発展途上国をも上回るものといえます。ちなみに2023年の日本の経済成長率は1.3%です。
経済成長とともにインフレも進んでおり、近年のインフレ率は毎年3~4%ほど。今後もこの傾向が進んでいくようであれば、UAEやドバイは日本にとってハードルが高い国になるかもしれません。
メインビジネスは原油?
ドバイは中東の国で、さらに産油国として知られるサウジアラビアとも近いため、原油のおかげで潤っていると予想する人も多いことでしょう。確かにドバイではドバイ原油と呼ばれる原油がとれます。しかし、原油によって潤っている都市はUAEの首都であるアブダビで、ドバイでの原油産出量はそれほど多くありません。では、ドバイはなぜこれほどまでに発展しているのでしょうか。
ドバイは原油に頼らない産業構造づくりに取り組んでいる都市です。原油に頼り過ぎてしまうと、原油がとれなくなった際に一気に衰退してしまうためです。実はドバイは、小売や卸売をはじめとした貿易業や不動産、金融、サービス、テクノロジーなど、非常に幅広いビジネスを展開しています。また、海外の企業を積極的に誘致し、法人を設立・維持するための「ライセンス費用」を徴収しており、それが国の主な財源となっています。
昨今特に強みを持つのは国境の影響を受けない金融やテクノロジー分野。仮想通貨やWeb3、生成AIなど、世界で注目されているテクノロジーの開発を政府が積極的に推し進めることで、世界から優秀な人材や企業を誘致しています。
ドバイ政府が打ち出す数々のビジネス政策
近年のドバイやUAEの発展は、国が打ち出す数々の政策が成功しているためと考える人も多いようです。UAEやドバイの気になる政策について紹介します。
経済10ヵ年計画「D33」
「D33」は、ドバイが2023年に独自に打ち出した経済成長に関する10ヵ年計画です。2033年までに以下の数値目標を達成することを目指しており、実現するための100の施策が次々に打ち出されています。
ドバイ政府が経済10カ年計画を発表(アラブ首長国連邦) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース
- 貿易:貿易総額を過去10年間の14兆2,000億ディルハムから、向こう10年間で25兆6,000億ディルハムまで引き上げる。
- 海外直接投資受け入れ(FDI):過去10年間の年平均320億ディルハムから、向こう10年で年平均600億ディルハムまで引き上げ、2033年まで10年総額6,500億ディルハムを達成する。
- 政府支出:過去10年総額5,120億ディルハムから、向こう10年総額7,000億ディルハムまで引き上げる。
- 産業競争力の強化:民間セクターの投資を過去10年総額7,900億ディルハムから向こう10年総額1兆ディルハムに引き上げる。
- 財とサービスの国内需要総額:過去10年総額2兆2,000億ディルハムから向こう10年総額3兆ディルハムに引き上げる。
- デジタルトランスフォーメーション(DX):DXによって、ドバイ経済に年間1,000億ディルハムの貢献をする。
ドバイブロックチェーン戦略
ドバイは2016年に「ドバイブロックチェーン戦略」と呼ばれる施策を打ち出しました。これは、2021年までにブロックチェーンを活用したデジタル政府を目指すものです。これによりドバイ政府のデジタル化が急速に進み、世界でもまれにみるデジタル国家へと変貌しました。2021年以降もこのプロジェクトは進行しており、さらなるデジタル化、ブロックチェーン化に取り組んでいます。
ドバイメタバース戦略
2022年には「ドバイメタバース戦略」が発表されました。世界でトップ10以内のメタバース都市になることを目指すことを宣言したもので、以下の内容に取り組むとされています。
- 今後5年間で4万人以上のメタバース関連雇用を生み出す
- 40億ドルのメタバース経済を生み出す
- 外資を積極的に誘致し、ブロックチェーンとメタバース関連の企業数を5倍以上にする
ドバイ都市マスタープラン2040
2021年に発表された都市開発プランが「ドバイ都市マスタープラン2040」です。ドバイ都市部のさらなる開発や既存施設の再利用、住民と観光客の両者が満足できる環境づくり、外国人投資家の誘致、持続可能な環境の構築などが具体的に挙げられています。このプランを軸にして、ドバイは更なる成長を遂げようとしています。
このように、ドバイ政府が世界最新のテクノロジーを積極的に取り入れる姿勢を打ち出すとともに、明確なプランを打ち出すことで経済成長を後押ししています。近年まれにみる成長を遂げているドバイですが、今後はさらに加速するとも考えられています。
条件を満たせば税金が無料
ドバイに社長や起業家、有名人が集まる大きな理由の1つが、法人税や所得税が無料という独自の税制です。この優遇税制措置を受けるためには必要な書類を提出したり、ルールに則って法人設立をしたりする必要がありますが、税金がゼロというのはやはり魅力的。これを目当てに外資系企業や富裕層が集まっているため、ドバイでは今後も経済成長が続くだろうと考えられています。
ドバイの税制や法人設立に関するルールなどは以下の記事で丁寧に説明していますので、ぜひご覧ください。
ドバイでのビジネスや移住に興味があれば代行の利用がおすすめ
ドバイは外国人を積極的に受け入れているため、他の国と比べると移住や法人設立は比較的簡単です。しかしながら、やりとりや書類作成には英語が必須で、さらに専門的な用語も度々登場します。もしドバイへの移住や法人設立をスムーズに行いたければ代行を利用するのがおすすめ。特に法人設立は複雑な手続きが必要になることに加え、ミスが生じた場合には追徴課税を課せられることもあるため、ドバイに精通した法人設立の代行会社を通すのがよいでしょう。
以下の記事でドバイでの法人設立やビザにおすすめの代行会社を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。