ドバイでは一定の条件を満たすことで法人税や所得税をゼロにできることから、世界中の起業家や個人事業主が注目しています。
海外での法人設立には外資規制があったために、ノミニー法人等を設立するケースが多かったですが、最近のドバイでは外資100%での会社設立が可能で、50年間は法人税が免除されます。
法人設立までの道のりは簡単ではないものの、ドバイは外国人による法人設立に対して前向きな姿勢をとっているため、正しく手続きを進めれば実現可能です。
この記事では、ドバイに法人設立を考えている方がスムーズに準備を進められるように、法人設立の流れを丁寧に説明します。また、ドバイでの会社設立の鍵ともなる税制事情や気になる費用、ドバイに法人設立するメリットやデメリットについても詳しく解説していきます。
- ドバイで事業展開する際の税金事情
- ドバイでの法人設立手順
- 費用やメリット・デメリット
- エージェントの探し方
ドバイの税金事情について
ドバイでの会社設立の最大ともいえるメリットは、条件を満たした場合に法人税が無料という点です。
フリーゾーン企業は、『この施行規則で指定されたすべての条件を満たす』場合に免税としている。原則として、UAE国内(メインランド)との取引がなければ課税対象外となるが、税務当局への申告は必要になる
参照:税制 | アラブ首長国連邦 – 中東 – 国・地域別に見る – ジェトロ
ここで気をつけるべきなのは、あくまでも条件を満たせばという点です。
アラブ首長国連邦は税制のルールを細かく設定しており、このルールに従った場合のみ法人税や所得税、住民税などの税金がゼロになります。
ドバイに行けば税金がゼロになるといわれることもありますが、何もしないで税金がゼロになることはないため、注意しましょう。
外国人が法人設立で大きな税制優遇を受けるには、次に説明するフリーゾーンを正しく理解する必要があります。
税制優遇が受けられるフリーゾーンとは?
「フリーゾーン(Freezone)」とは、ドバイ政府が提供している外資系企業誘致のための「経済特区」です。このフリーゾーン内で設立された法人であれば、様々な優遇措置が受けられます。
そのうちの1つが税制面の優遇で、フリーゾーン内であれば、法人税と所得税が50年間非課税となります。
フリーゾーンで享受できるその他優遇措置の例は以下の通りです。
- 外資100%による法人設立が可能
- 外国人労働者の雇用制限がない
- 資本と利益の本国送金が自由に行える
フリーゾーンはドバイに20種類以上あり、各々が独自のルールを採用しています。そのため、事前に利用予定のフリーゾーンを確認し、自身の条件とマッチするかを確認しておく必要があります。
また、フリーゾーンに関するルールは変更される可能性もあります。例えば、2023年6月からは、フリーゾーン内であってもオンショア会社であれば9%の法人税が課されるように変更されました。
2023年6月よりオンショア会社に対して法人税(9%)が導入される
参照:外資に関する奨励 | アラブ首長国連邦 – 中東 – 国・地域別に見る – ジェトロ
さらに、税制優遇を受けるにはフリーゾーンごとの細かい条件をクリアする必要もあるため、注意が必要です。
フリーゾーンで税制優遇措置を受けるには様々な条件を満たす必要はあるものの、非常に魅力的な条件がそろっているため、外国人であればまずはフリーゾーン内での法人設立を検討するのがよいでしょう。
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メインランド(フリーゾーン以外)での税制ルール
フリーゾーン以外のエリアを「メインランド」と呼びます。フリーゾーンが特別に設けられた経済特区で、メインランドはUAE国内の通常エリアという位置づけです。地元企業が起業する場合には主に、このメインランドでの税制ルールが適応されます。
ドバイの通貨は「AED(ディルハムと読みます)」ですが、メインランドでは年間所得が37万5,000AEDを超える場合に、法人税が9%課されます。メインランドにおける税制ルールも変更されることがあるため、最新の情報を確認するようにしましょう。
ドバイのVAT(付加価値税)
ドバイでは、商品やサービスを購入した際に、VAT(付加価値税)と呼ばれる税が発生します。日本でいう消費税と考えるとよいでしょう。ドバイのVATは2018年1月1日より実施され、税率は5%です。例えば100AEDの商品を購入した場合には、100×1.05=105AEDの支払いが求められます。
2018年1月1日より、アラブ首長国連邦(UAE)全土において、標準税率を5%とするVATが施行されることが決定している
参照:UAE VAT OVERVIEW アラブ首長国連邦税制 UAEにおける付加価値税(VAT)制度について 最終更新日 2017 年 12 月 25 日
日本では10%であることを考えると、生活やビジネスにおいて政府に支払うVATは少ないといえるでしょう。
また、ドバイにはゼロレートというVATが0%になる仕組みもあります。ゼロレートは、一定の条件を満たす商品やサービス、イベントなどで適応されます。
- 教育サービス
- 医療サービス
- 金融サービス
- 国際博覧会「エキスポ2020」
また、上記の例のほかにも、国際的な取引などではゼロレートが適用されることがあります。ただし、ゼロレートや免税を適用するには、細かい条件をクリアすると同時に、適切な手続きを踏む必要があります。何もしないで税がゼロになることはありませんので、ご注意ください。
ドバイが低い税制で成り立つのはなぜ?
上記で見てきたように、ドバイは様々な場面において税率が非常に低い、もしくは非課税となっています。このような税制で、なぜドバイが成り立つのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか?
ドバイが成り立つ理由として、ドバイでは事業毎にライセンスを固定で払う必要があり、そのライセンス費が政府の大きな収入源になっているからです。ドバイで事業を行うには1年に一度、ライセンス費として約100万円(為替相場によって異なる)ほど手数料を支払う必要があり、これが政府の大きな財源になっています。
また中東ドバイに対して石油(オイルマネー)のイメージを持つ人もいるかと思いますが、実はドバイの石油産出量はそこまで多くありません。それ以上に、ビジネスや観光を軸に外資を集め、目覚ましい経済発展を遂げることで都市を潤しているという現状があります。
日本では登記簿に複数の業務内容を記載し、多展開することが可能です。一方、ドバイでは最初に登録した事業のみしか実施できず、多展開するには別法人を作る必要があるため、ライセンス費が政府に多く入ってくる仕組みになっています。
ドバイの税制は外国人の法人設立とスピーディな事業拡大に魅力的
これまで見てきたように、ドバイでは会社経営に関わる税を大幅に削減(もしくはゼロに)できるため、経営者は利益を最大化できます。
日本であれば、得られた利益に対して税金の支払いが発生するため、事業に対して投資できる額が少なくなりますが、ドバイでは利益の大半を事業投資に回すことが可能です。
これにより、スピーディで力強い事業展開が可能になるため、例えば日本では10年かかるだろう事業拡大や目標達成が、3~4年で実現できる可能性もあるでしょう。
ドバイは外国人が会社設立をするうえで、非常に優れた環境が整っているとともに「事業をハイスピードで展開したい」「より早く事業拡大を実現したい」という方々にとって、魅力的な国といえます。
ドバイで法人設立する手順をわかりやすく解説
ドバイで法人を設立する手順を解説します。ドバイで法人設立する手順は以下の通りです。
- 法人の種類を決める
- エージェントを選ぶ
- visaの選択
- 書類の提出
- Evisa(仮認証)をもらって入国する
- 健康診断&保険加入
- visa発行までドバイ国内で待機
- エミレーツID発行(マイナンバー)発行
- 不動産契約(賃貸は年間一括で決済が基本)
ドバイの言語はアラビア語ですが、ドバイでは国外の起業家や労働者、移住者、観光客などを積極的に誘致している現状もあり、多くの書類は英語で書かれています。
しかしながら、法人設立に関する書類の解読や準備は簡単ではありません。また、「ドバイで法人設立するデメリット【項目別で解説】」の章で詳しく説明しますが、申請が適切でなかった場合には、大きな罰金や追徴課税をとられる可能性もあります。
そのため、ドバイで法人設立する際には、ドバイの事情に熟知したエージェントを利用するのがおすすめです。
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1.法人の種類を決める
ドバイで設立する場合、まずはフリーゾーンを利用するかどうかを決める必要があります。フリーゾーン内であれば、様々な税制優遇が受けられます。また、外国企業や外国人起業家向けに設置された地区であることからも、法人設立がスムーズに進む可能性が高いです。
ただし、ドバイは近年、より積極的に外資参入を進めており、メインランドにおいても100%外資出資の法人設立が可能になっています。そのため、フリーゾーンとメインランドの違いは縮小傾向にあります。
フリーゾーンはそれぞれの地区が管轄していることから、よりスムーズに、より早く法人設立ができる可能性がある一方で、選んだフリーゾーンによっては想定外の時間がかかってしまう場合もあります。
フリーゾーンとメインランドで設立可能な法人の種類について、以下の表にまとめました。
エリア名 | 概要 | 設立可能な法人の種類 | 設立がおすすめな人 |
---|---|---|---|
フリーゾーン | 外国人の法人設立がしやすい環境が整えられている。 優遇を受けるには、各フリーゾーンのルールに則った準備や運営が必須。 また費用も安い傾向にあり | メインランド有限責任会社 メインランド支店 メインランド駐在員事務所 フリーゾーン会社 フリーゾーン支店 フリーゾーン駐在員事務所 | ドバイでの法人設立を初めてする方(難易度踏まえて) なるべく早く簡単に法人設立を済ませたい方 |
メインランド | ドバイの地元企業と同じ条件で法人運営が可能。 フリーゾーンとの差異は近年縮小傾向にある | Joint Liability Company Limited Partnership Company Limited Liability Company Public Joint Stock Company Private Joint Stock Company | ドバイに腰を据えて事業を展開したい方 政府や銀行などからの信頼を高めたい方 口座開設の確実性をより上げたい方(クロスボーダーでの取引をする為) |
2.エージェントを選ぶ
設立する法人の種類が決まったら、エージェントを選びます。(法人の種類選びも含めてエージェントに相談するのももちろん可能です)
ドバイは外国人の法人設立に積極的ではありますが、設立に向けた書類作成は簡単ではありません。また、後に申請ミスが発覚した場合には、大きな罰金や事業停止、追徴課税などが課せられる可能性があります。
スムーズかつ安全に法人を設立・運営するには、エージェントに相談するのがおすすめです。エージェントに依頼するメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
スムーズかつ短時間で法人設立が可能 申請ミスによる罰金や追徴課税を避けられる 最新のルール変更に適応できる 会社設立に関する業務を大幅に削減できる 困ったときに気軽に相談できる | エージェントに支払う報酬が発生する エージェントによっては期待する成果が得られない 法人設立までの進行状況が見えづらくなる 自身(自社)にノウハウが蓄積されない 一部で悪質なエージェントも存在している |
ドバイでの法人設立が初めての方であれば、エージェントの利用をおすすめします。記事の最後に、エージェント選びのポイントも記載しておりますので、気になる方はご確認ください。
3.visaの選択
続いて、visaの選択を行います。visaとは、各国が外国人の入国や滞在を認めることを示す許可証のようなものです。日本のパスポート保持者であれば、ドバイの入国・滞在に関しては、30日間滞在できる「On Arrival visa(短期滞在査証)」が自動的に付与されます。しかしながら、これはあくまでも観光が可能なvisaです。ドバイでビジネスを行うには、それに適したvisaを別途取得する必要があります。
法人設立に適しているのは「Investor visa(投資家ビザ)」です。Investor visaは、自身で会社を設立した人が取得できるビザで、滞在年数は2年間です。ただし、会社を設立した人しか取得できません。基本的には、短期滞在査証や後に説明するEvisaで入国し、法人設立手続きを進め、法人設立後に投資家ビザを取得する、というのが一般的です。ある程度事業が順調に進んだ場合、より滞在期間が長いGolden visaに変更するのもよいでしょう。
ここでは、それぞれのvisaの特徴だけ簡単に押さえておくとよいでしょう。ドバイで取得できるvisaの情報を以下に示します。
種類 | 特徴 | 滞在期間 |
---|---|---|
(短期滞在査証) | On Arrival visa日本のパスポート保持者であれば 入国時に自動的に付与される | 30日間の滞在と 10日間の出国猶予期間 |
(投資家ビザ) | Investor visa自身で会社を設立する、 もしくはドバイの不動産などに一定額投資する | 2年 |
(従業員ビザ) | Employee visaドバイの会社にて従業員として働く場合に取得可能 | 2年 |
(家族ビザ) | Family visa家族の誰かが投資家ビザもしくは従業員ビザを取得した場合に、 その家族が取得可能 | 2年 |
(ゴールデンビザ) | Golden visaドバイに一定以上の貢献もしくは投資をした場合に取得可能 | 5~10年 |
(バーチャルワーキングビザ) | Virtual Work visaドバイ国内にてリモートワークを行う外国人が取得可能。一定の要件あり | 1年 |
参照:ドバイ法人設立費用、VISA取得手続きや業者比較、ドバイ物価などの全まとめ【2023年最新版】
参照:祝!ドバイのバーチャルワーキングビザを取得しました!
4.書類の提出
法人設立に必要な書類を作成、提出します。ドバイでは外国人の法人設立を積極的に誘致しているとはいえ、法人設立のための書類は複数あり、非常に複雑です。また、メインランドとフリーゾーン内では提出書類が異なり、さらにフリーゾーン間でも必要書類が異なります。
例として、フリーゾーンの1つであるジェベル・アリ・フリーゾーンで法人設立する場合の必要書類は、以下の通りであると紹介されています。これらの書類を作成し、提出し、許可が下りれば、法人設立の大半が完了となります。
- 申請書
- 事業計画書
- EHS(環境・健康・安全対策)申請書・EHS関連基準遵守書
- フリーゾーン法人の代表者、役員のパスポート・ビザ(居住者の場合)のコピー
- (出資者が法人の場合)親会社の登記証明またはライセンス等会社情報を証する書面 ※
- (出資者が法人の場合)親会社の会社定款 ※
- (出資者が法人の場合)FZE、FZCO設立とその代表者を決定した親会社の取締役会の決議書 ※
- フリーゾーン法人の代表者および委任状を有する申請代行者の署名鑑(JAFZAの証明を受けたもの)
- JAFZA所定のKYC/UBOに関する文書
- 申請代行者に対する委任状
※書類は英語に翻訳し、在外UAE大使館およびUAE外務省の認証を受ける必要がある。
引用元:外国企業の会社設立手続き・必要書類 | アラブ首長国連邦 – 中東 – 国・地域別に見る – ジェトロ
5.Evisa(仮承認)をもらって入国する
書類審査が通過した場合、Evisaをもらって入国します。Evisaとは、visaを取得したい外国人が一時的にドバイ内に滞在するのを許可した仮のvisaです。Evisaの申請は短期滞在査定で入国した後に行うこともできますが、入国前にも行えるため、その他業務をスムーズに進行するためにも入国前の取得をおすすめしています。Evisa発行にかかる期間は1週間ほどです。
Evisaを取得できたら、ドバイに入国し、会社設立に必要な残りのステップをエージェントと相談しながら進めていきましょう。
6.健康診断&健康保険加入
ドバイで事業を行うには、後で紹介するエミレーツIDを発行してもらう必要があります。これは、日本でいうマイナンバーのようなもので、個人に関する様々な情報が集約されています。エミレーツIDを発行してもらうためには、条件に合った健康診断を受ける必要があります。エミレーツIDの発行をスムーズに進めるためにも、入国後に早めに健康診断を済ませておくことをおすすめします。
また、ドバイの健康保険にも加入する必要があります。ドバイ保険局はvisaを管理する外国人登録総局と連携しており、必要な健康保険に加入していない場合、新規visaの発給と既存visaの更新を行わないというルールがあるためです。
健康診断の実施や健康保険への加入は、仕組みが難解というわけではありませんが、文化や言語の壁を思った以上に高く感じることもあるでしょう。例えば、健康診断にしても、どのような検査が必要なのか、検査前の食事はどうするのかなどを英語で確認する必要があります。日本の検査方式と異なるものも多いでしょう。
そのため、法人設立をできる限りスムーズに、ストレスなく済ませたい方は、これらも含めてサービス提供しているエージェントを選ぶのをおすすめします。
7.visa発行までドバイ国内で待機
会社設立に必要なvisaが発行されるまでドバイ国内に待機します。ドバイ独自のルールとして、visaの申請後にはUAE国外には出られないというものがあります。visaが発行されるまでに通常2週間程度かかるため、事前に適切なスケジュールを組むことが大切です。
8.エミレーツID(マイナンバー)発行
エミレーツIDが発行されたら、様々な手続きが実施できるようになります。例えば、ドバイ国内での銀行口座開設や、携帯電話の契約などが可能です。法人運営に必要な準備を進めていきましょう。
エミレーツIDは、ドバイ政府が運営する以下のWebサイトよりオンラインで申請できます。また、エミレーツID発行にあたり生体認証情報の登録が必要になるので、指定されたICA登録センターに出向き、指紋や顔写真の登録を行う必要もあります。
エミレーツID申請サイト→ Federal Authority for Identity and Citizenship(ICA)
9.不動産契約(賃貸は基本年間一括)
法人設立のためには、所在地となる不動産を選び、契約を行う必要があります。ドバイでの不動産賃貸契約は年間一括となるのが基本です。ある程度まとまった費用が必要になることは事前に把握しておくとよいでしょう。
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ドバイで法人設立する際の費用
ドバイで法人設立をするには、様々な費用がかかります。一般的に、設立時に必要な費用と年間維持費は以下の通りです。
法人設立および 維持にかかる費用 | 設立時に必要な費用 | 年間維持費 |
---|---|---|
フリーゾーン内 | 100~200万円 | 100~120万円 |
メインランド | 150万円程度 | 100~150万円 |
設立時に必要な費用には以下のようなものがあります。
- 法人登記費
- 設立代行費用(口座開設サポート料含むケース有)
- オフィス賃貸料
- ビザ取得費
- 健康診断や保険加入費など
オフィスの賃貸料は、選んだ場所や質などによって大きく異なります。また、一年分を一括で支払う場合が多いため、まとまった金額を準備しておくとよいでしょう。また、これに加えて資本金も必要となります。
年間維持費は以下の通りです。
- ビジネスライセンス費用
- オフィス賃貸料
- ビザ取得費用
- 会計業務及び決算費用
初期費用と比べると法人登記料がかからないため、設立時に必要な費用と比べると安くなる傾向にあります。しかしながら、ドバイでは毎年の確定申告が義務付けられており、それにより決算や会計費用が30万円~かかります。
税制面の大きな優遇が受けられるドバイですが、会社設立や会社維持には一定の費用が必要になることは事前に理解しておくとよいでしょう。もし違反による罰金や手続きの滞りなどによる事業計画の遅延を防ぎたければ、多少の費用はかかってでも、エージェントに依頼するのがおすすめです。ドバイ法人設立に精通したエージェントであれば、相談者の悩みに沿った適切なサポート体制を提供してくれます。
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ドバイで法人設立するメリット【項目別で解説】
ドバイで法人設立するメリットについて、税金、事業、生活の3つの面から紹介します。
(税金)税優遇
ドバイで事業を行う最大のメリットは、条件を満たせば法人税や所得税が発生しない点です。例えば、年間で1億円の利益がある事業であれば、法人税等の観点からのみ見た場合、以下のように、大きな税引利益が得られます。
税金の比較表 | 日本 | ドバイ |
---|---|---|
利益 | 1億円 | 1億円 |
法人税等(※1) | 3,722万4,200円 | 0円 |
税引後利益 | 6,277万5,800円 | 1億円 |
法人税計算シミュレーション
ドバイでの法人設立や法人維持には一定のコストが発生するものの、ある程度大きな利益がある事業にとっては、ドバイでの法人設立は大きなメリットといえます。
(事業)Web3はじめ先進分野への政府支援・時差
ドバイでは、政府がWeb3をはじめとした先進分野に対し積極的に支援を行っています。例えば、ドバイ政府は2016年にブロックチェーンを積極的に導入した施策を行うことを発表し、世界初のブロックチェーン導入政府となりました。また、2022年にはメタバース戦略を発表し、ブロックチェーンとメタバースの企業を5倍にまで増やすこと、4万人のメタバース関連雇用を生み出すことなどを公表しました。
ドバイでは、Web3をはじめとした先進分野への政府支援が受けられるため、その分野において起業したい人たちにとっては非常に魅力的です。また、先端分野の誘致が進めばドバイにおける給料や物価も上がり、それ以外の分野の人たちも大きな恩恵を受けることができます。実際、ドバイには富裕層が増えているため、飲食店などにも多くのお金が流れ、様々な分野の事業家たちを成功に導いています。
また、ドバイの時差はGMT+4であることから、世界各国とやりとりしやすいのも魅力です。日本とは5時間、イギリスとは4時間の違いになるため、オンラインでのMTGも容易に行えます。
(生活)温暖・コミュニティ
ドバイは中東にある暑い国、というイメージを持つ人も多いと思います。実際、ドバイでは夏が50度以上になることもあります。しかしながら、ドバイでは室内のほとんどでエアコンが完備されているため、生活面において長時間暑さにさらされるということはほとんどありません。また、砂漠気候により雨がごくたまにしか降らないため、天候のせいで外出が制限されることがないのも魅力。世界の富裕層がこぞって移住していることからもわかる通り、ドバイは多くの人にとって住みやすい都市として高く評価されています。
また、ドバイには起業家が多いため、様々なコミュニティが構築されていることでも知られています。日本人コミュニティや特定のビジネス分野に特化したコミュニティなど、起業家にとって重要な情報源になるコミュニティが多くあります。ドバイでは、ビジネス・プライベートともに充実した日々が過ごせるでしょう。
ドバイで法人設立するデメリット【項目別で解説】
様々なメリットがあるドバイでの法人設立ですが、いくつか気をつけるべきデメリットもあります。特に税金の追徴課税についてはビジネスに大きな影響を与えかねませんので、細心の注意を払うようにしてください。
(税金)追徴課税リスクがある
ドバイでは、条件を満たした場合は法人税や所得税をゼロにすることができます。しかしながら、こちらは条件を満たしたつもりでも、実はドバイの税制ルールに則っておらず、税金の支払いを求められる場合があります。虚偽事項があった場合はもちろん、簡易なミスが原因で追徴課税が課せられる場合も。追徴課税の額は時間が経つにつれて大きくなるため、事業開始から数年後に想定を超える追徴課税を課せられることもあります。
英語の書類にすべて目を通し、ドバイの税制を100%理解するのは非常に困難です。ドバイではじめて法人設立を行う場合には、追徴課税リスクを避けるためにも、いつでも気軽に相談できるエージェントと連携することをおすすめします。
(事業)維持費がかかる
ドバイでは大きな税制優遇が受けられますが、事業を行う上で税以外の支出ももちろん発生します。
例えば、ドバイではライセンス費や(自身では処理が難しい)会計業務の外注費等の支払いが毎年発生します。例え事業が赤字であったとしても、事業を維持するためのそれらの費用は必ず支払う必要があります。
(生活)物価
ドバイの物価は日本よりも高いことで知られています。例えば、ドバイのレストランで食事をした場合、1人当たり5,000~1万円ほどかかるのが一般的。ファーストフードであれば1,000~2,000円ほどで済ますことも可能ですが、ある程度質のよい食事をとろうとすれば、日本の数倍の費用を覚悟しておく必要があります。
また、ドバイの消費者物価指数(CPI)はここ数年、4~6%ほどで推移しています。
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ統計センターの発表によると、ドバイ首長国の2022年12月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同期比5.18%だった。また、2022年の年間を通した上昇率は前年比4.67%となった
参照:2022年のドバイのCPI上昇率は4.7%(アラブ首長国連邦) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース
まり、ドバイの物価は近年、かなりのハイペースで上昇しています。日本も新型コロナウイルスやウクライナ紛争などにより物価上昇が進んでいますが、それとは比べ物にならないスピードで物価が上がっています。事業に必要な各種備品の購入などにも影響が出てくるため、ドバイにおける生活費や物品の相場観については敏感になっておくとよいでしょう。
サポートしてくれるエージェント選びのポイントと注意点
ドバイにおける法人設立をエージェントに依頼、もしくは一部サポートをお願いする場合には、エージェント選びについても慎重になる必要があります。
選ぶエージェントによって法人設立までにかかる期間や費用、サポート範囲、対応力などが大きく異なるためです。以下に選び方のポイントをまとめましたので、エージェントを決める前に、ぜひ参考にしてみてください。
- ドバイでの法人設立経験が豊富
- ドバイ法人設立に関して適切な情報を公開している
- ドバイ法人設立の最新情報に対応している
- 適切な費用(手数料)が設定されている
- 口座開設の保証をしてくれる
- 会計面の相談にものってくれる
- visaやエミレーツIDの発行に関する費用も明確に含まれている
- ドバイで事業を行えるライセンスを適切に取得している
気をつけたいのが口座開設のサポートです。ドバイではVIP対応とノーマル対応を分ける文化があります。VIPであれば各手続きが非常に迅速かつスムーズに進む一方で、ノーマル対応の場合には作業が一行に進まないという場合があります。法人設立に重要な口座開設に関しても、ノーマルの方法で実施すると1年待ちとなることもありえます。そのため、VIP対応できるように手配してくれ、銀行担当者とのリレーションもあるエージェントを優先的に選ぶことが大切です。
最後に、エージェント選びにおける注意点を紹介します。
まず、自社でサポートを提供するのではなく、他の会社に仲介するだけのエージェントには注意が必要です。紹介された会社の質が低く、法人設立にたどり着けない、もしくは想定を超える時間と費用がかかる可能性があります。
また、エージェントがしっかりと事務所を所有しているかも確認してください。規模に応じて支援できる会社の上限がある場合があります。
さらに、発生する手数料を明確に示さず、後になって追加の費用を要求するようなエージェントもいるようです。法人設立までに必要な手順を自身でしっかりと確認した後、それらすべての費用が含まれているかどうかという目線で費用を確認してください。安いエージェントはその分質が悪い可能性が高いと考えてください。不適切な申請などにより追加費用やミスによる罰金、口座開設の遅延によって節税効果が享受できない期間が発生する可能性があります。総合的に見た場合、安い手数料で不安な日々を送るよりも、信頼・安心できるエージェントに依頼したほうが事業は上手く行く可能性が高いといえます。
エージェントの質はピンからキリまであります。ドバイの税制優遇や政府のサポートを最大限に活かすとともに、実態(事業面・会計面)と適切な口座をもって、ボーダレスに事業を行っていきたいのであれば、エージェント選びは非常に重要。妥協することなく、本当に信頼できるエージェントを選びましょう。